Voice Vol.2
Ryota Izumi

VOICE vol.2 Ryota Izumi


未来の自分ではなく、今、いいと思う姿を積み重ねる。


日曜の午後、いつもであれば稽古場から発声や芝居の台詞が聞こえてくる時間帯。しかし、その日はいつもとは違う声が稽古場に響く。

「はい、それじゃ次、目線はカメラのまま顔を少し右に向けて」
「じゃラスト。好きな風に動いてみて」

声の主はフォトグラファーでもある主宰の柳本。声と共に響きわたるシャッター音。レフ板が反射させる光の中、劇団員達は背景紙の上で思い思いのポーズをとる。この日、稽古場に簡易スタジオを組み立て、写真撮影会が行われていた。公演チラシやパンフレット、HPや挨拶状等の広報媒体用の役者写真を撮るのだ。

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劇団員達はメイクや衣装を整え、ここぞとばかり気合いを入れる。だが、いざ撮影が始まると、被写体となる役者達は余り写真に撮られ慣れしておらず、自身の見せ方が解らず四苦八苦する者が多い。どうしても一人一人の撮影に時間がかかってしまい、昼に始まった撮影が、気が付けば終電を調べないといけないような時間まで続くことも少なくない。

しかし、和泉涼太だけはテンポ良く短時間で撮影が終わる。カメラマンが引き出したい魅力的な表情やポージングを、迷いなくカメラの前で行えるからだ。迷いなく短時間で自分を表現できる。それは、彼が自分の魅せ方を心得ているからに他ならない。その心得は、彼の普段から自身を研究する“自分チェック”に基づいている。

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「撮影はそうだね、終わるの早いね。日常の“自分チェック”が良いんじゃないかな。鏡を観る回数はすごく多いね、自分の事が好き、というか、いつも気にしてる。電車の窓やショーウィンドウとか車のガラスに映る自分を確認する。顔や歩き方とか立ち方とかやら、イカシテるかなってね。」

「鏡を観る回数が多い」と聞くと、ついナルシストなイメージが先行してしまい勝ちだが、「どう観られるか」という意識は役者として基本中の基本である。

観られることへの意識は、涼太が幼い頃から培われたものである。
「小さい頃からテレビのお笑いの方々を真似て友達と毎日バカなことしてた。学校でみんなを笑わせられる奴って、人気になってモテる。友達と笑いあうのが楽しかった。その延長でテレビのお笑いの方みたいに仕事になれば楽しい毎日送れるんじゃねーかなっていう浅い考えで大学卒業したらお笑いをやろうって思ってた。 相方に相応しい親友がいたけど海外留学しちゃって、ひとまずまだいいかって思ってたら、演劇の世界に入ってた。」

そんな涼太の役者としての根幹は幼少に観たミュージカルと家族の影響が強い。その時の感覚が、涼太のアイデンティティに繋がっている。

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「俺を観た人達の感性を温める、それが翌日になっても温もり続けている、っていう俺の演者の観念は変わらないなって。それは例えば、俺がミュージシャンや絵描きとかになっても、その気持ちは変わらないだろう。もちろん、作品作りの工程は違うけどね。」

「観た人達の感性を温める」という心意気こそが涼太のアイデンティティであり、どんなフィールドにいてもそれがある限り涼太は涼太なのだ。 そしてそこに、常に「観る人」「観られる自分」を意識する彼の生き方があるのだ。

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もう一つ、涼太には役者として面白い特徴がある。
涼太と共演する役者からの評価に「躊躇無く叩くことができる」というのがある。 芝居によっては、喧嘩や、感情の高ぶりから相手を叩いたり平手打ちをするシーンがあることもある。

もちろん役者同士、そこは芝居なので本気で殴る訳ではないが、ある程度は強く見えるように叩かないと観客には伝わらない。下手に遠慮した力加減で叩くと、かえって相手にダメージを与えてしまうこともある。 そんな場面で、他の役者から遠慮なく叩かれるのが涼太である。叩かれた方はきっと痛いには違いないのだが、いくら叩かれても彼が平然としているのはなぜだろうか。

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「相手に遠慮されたら作品づくりに支障でるからね。これは俺の性格や経験というより、役者として相手側に躊躇遠慮なんかさせないよう努めるべき。」 涼太はいつも通りの笑顔で平然と話す。「遠慮なく叩かせる役者はいい役者である」という言葉を聞いたことがある。 涼太も、相手役に遠慮のない全力の芝居をさせる気遣いのできる役者である。これは涼太の考える「いい役者像」を実践しているに他ならない。

「いい役者は、対話できる人。会話でなく対話ね。演出家や相手役と対話をして、期待以上のことを出来る役者。」

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相手役との対話ができているからこそ、遠慮なく叩き叩かれる信頼関係ができあがっているのだ。 明確に理想の役者像ができている涼太にとって、自身の役者としての将来はどんなものを描いているのだろうか。

「あまり未来の自分とか考えないからな。そうだな、ここ数ヶ月で劇団に若い人達やまだ初心者の方が入団したからさ、みんなの模範になるよう努めたいね。」
いい役者像が明確だからこそ、未来の自分ではなく、今、いいと思う姿を積み重ねる。それが皆の手本になると考えているのである。

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ところで冒頭で述べた撮影会、これも言ってみればカメラマンと役者の対話である。
劇団Q+での撮影は役者個々にスタジオ入りするのではなく、役者が一同に会し、順番が来れば被写体になるが、それ以外はアシスタントに入ったり撮影風景を見守っていたりする。
場合によっては、10人近くの劇団員が撮影を見守る状況というかなり特殊な状況になる。いつもと変わらぬ迷いの無い表情から、涼太はそんな状況下でも全く抵抗無くカメラマンやオーディエンスと対話できているように見えるが……

「あんな周りから見られて写真撮られるの、好きじゃないよ。恥ずかしい気持ちはあるよ。」

迷いのないテンポに見えて、やはり特殊な状況に一定の戸惑いがあるようだ。だが、それを周囲に一切見せずカメラマンとの対話に集中できているところがやはり涼太である。

涼太

和泉涼太 役者/ROCK

  • 職業 会社員
  • 血液型 A型
  • 誕生日11月14日
  • 趣味 / 特技 Rock / フェンスをカッコよく飛び越える
  • 出身 東京
  •  
  • 出演
  • 「アイノカタチ」「ポイプロ!」「Outsider A」「ご予約の高橋様」- 劇団Q+ /「風より迅く」「知らざぁ言って聞かせやしょう」「太陽の破片」- 演劇集団BrockenBrocken / 「みんなでお茶を」「ハナウタ商店街へようこそ」「みんなでお茶を」「夜はこれから」「器用で不器用な男と不器用で器用な男の話」「本人不在」「横浜御気楽総合病院」「clear」「恋は世界を駆け巡る」- 横浜スタイル / 「黒船だあ!」- 離風霊船 / 「飯縄おろし」- project M [映像] 2010年クリス・チョン・チャン・フイ「HEAVENHELL」/ エンターテイメント集団「人間関係」立ち上げ現在活動中