Voice Vol.8
Shin Yoshimura

VOICE vol.8 Shin Yoshimura


見た方それぞれに何か届いたものがあれば嬉しいです。


酷暑と言われた2018年の夏の暑さの中、劇団Q+の根城であるやまびこスタジオの駐車場には劇団員によって大きな木枠が組まれていた。

劇団員たちが駐車場とスタジオを慌ただしく行き交う様子から、作業が佳境を迎えているのがうかがえる。

劇団員たちが出入りするスタジオ内はと言うと、稽古はまだ始まっておらず、他の劇団員たちが広げた洋服にハサミや針と糸を通したり、市販のお椀に加工を施したり、折り込み用フライヤーの仕分け等をしていた。

劇団Q+は毎年夏に本公演を行ってきた。

2018年の第5回本公演『サンパティック★ブロンコ』は夏の終わりである9月15~17日にラゾーナ川崎プラザソルで行われ、大盛況のうちに幕を閉じた。

劇団Q+にとって今までにない規模の公演であったが、連日の猛暑にも負けず劇団員たちは早朝から集まり大道具、小道具、衣装、制作とそれぞれの作業に流した汗が、こうして形になったのだ。

吉村伸 Shin Yoshimura

劇団員総出で進める公演準備の中でも、最も核となるのが脚本だ。
2018年も本公演は吉村伸の脚本による公演となった。

基本的に劇団Q+の公演は主宰の柳本から吉村に公演コンセプトが発信されるところから始まる。

「脚本に関しては、主宰から『こんな話』という話が来て、それに対して『こんなんでどうでしょう』と書いた初稿に主宰が『この方が面白いんじゃない?』って直していくやり取りからスタートします。最初の話は大体の構成まである場合もあれば、タイトルだけなんてこともあります。ちなみに、今作(『サンパティック★ブロンコ』)はタイトルだけ伝えられました」

VOICE vol.8 / 吉村伸 Shin Yoshimura

タイトルを伝えられただけで、果たして作りたい公演の方向性の共有は可能なのであろうか。

「そこは普段から演出とかを拝見していて主宰が『こういう舞台を目指しておられるんだな』という『感じ』は分かっているつもりなので、それで書いています」

吉村は劇団Q+のメンバーとしては最年長である。高校時代から演劇に触れていることから、演劇というものとの付き合いも最も長い人物である。その長い演劇との付き合いの中で様々なものを見聞きし、経験してきたからこそ、感じ取れるものがあるのだ。

VOICE vol.8 / 吉村伸 Shin Yoshimura

「演劇に初めて触れたのは高校の文化祭です。クラス展示で安楽死を扱うことになって、その表現として模擬裁判の芝居をすることになりました。その時、文芸部だったこともあり、2つあるチームのうちの1チームの演出を担当したのがきっかけです」
最初はクラスの出し物としての演劇だったが、その演劇への熱はそのまま収まることはなかった。

「その文化祭の翌年、休部状態になってた演劇部を有志で立ち上げました。その時に台本を担当したのがきっかけで脚本を書き始めました。当時、所属していた文芸部で文芸同人誌をやっていて、駄文も含めて毎月3本くらい書いていたので、脚本を書くことに抵抗はありませんでした」

VOICE vol.8 / 吉村伸 Shin Yoshimura

高校時代からの付き合いとなる吉村と脚本だが、劇団Q+での執筆で心がけていることや苦労について尋ねてみた。

「苦労というわけではありませんが、完全に自分の作品であれば、受け手にこっちに寄って来てもらえばいいと思うんですが、芝居、特に公演を前提とする脚本はお客様に寄っていかないといけない部分があるので、それを心掛けています。そういう意味では、今までの劇団Q+の上演台本に関しては、あくまでもお客様まで含めた劇団Q+の作品であって、自分の作品という感覚は全くないですね」

VOICE vol.8 / 吉村伸 Shin Yoshimura

昨年の第4回本公演『アイノカタチ』では出演はせず脚本・裏方に専念していたが、今回の『サンパティック★ブロンコ』では役者としての出演もした。好きな役者像はやはり昔から見てきたものが核となっている。

「好きな役者さんは大杉漣さん。あと本田博太郎さんも好きです。劇団ではケラさん(ケラリーノ・サンドロヴィッチ)のナイロン100℃作品が好きです。ケラさんだと他にも『黴菌』や『グッド・バイ』も面白かったです。最近、小野寺修二さんのカンパニーデラシネラに憧れてます。挑戦したい役、というか芝居は、昭和の日本映画みたいなのかな。やはり自分が育った時代の色が好きなんですね……」

VOICE vol.8 / 吉村伸 Shin Yoshimura

また、吉村について語るにあたり外せないのが「絵」についてである。絵のスキルを持つ人間が劇団に所属すると、一般的にその活用法はフライヤーや背景・衣装デザインとなる。しかし、吉村の場合は絵を芝居のスキルのひとつとして活かされたのだ。 最も活かされたのは第2回本公演『絵筆士のコグレ』、吉村は表題でもある絵筆士・コグレを演じた。コグレはとある空き地の壁に絵を描くことで、その空き地を訪れる人々に小さな勇気と奇跡を起こしていく。そして劇中で描かれた小さな絵がいくつも合わさり、最終的に1枚の大きな絵となったのだ。

「絵は小さい時から好きでした。というか必要に迫られて描いていました。育ったのが横浜の下町で、周りもそれほど豊かでもなかったんですが、たまにお金持ちの家があるんです。そういう家には玩具や本が沢山あって、それが羨ましくて、マンガのアトムを友達に借りて来ては好きなコマをノートに写したり、モスラを破れた靴下と針金ハンガーと古いシャツで作ったりと、玩具や本をやたらと自分で作る子供でした」

VOICE vol.8 / 吉村伸 Shin Yoshimura

吉村が育った昔の横浜の下町風景は、これまでの劇団Q+の公演でも第2回本公演『絵筆士のコグレ』や第4回本公演『アイノカタチ』の中でも描かれている。

第5回本公演『サンパティック★ブロンコ』では一転して、南バハリという架空の王国での出来事を描いている。一家で旅するブロンコ一座、女だけの踊り子集団・カルナバルタンブル、蚕を育てるマブシ村の人々、そして王宮の者たち。 彼らを介して吉村が伝えたかったことは何だったのだろうか。

「テーマは一応ありますけど、特にお客さんには言いません。見た方それぞれに何か届いたものがあれば嬉しいです」
2019年9月に劇団Q+は第6回本公演が決定している。どんな物語が紡がれるのか、それはまだ吉村しか知らない。

VOICE vol.8 / 吉村伸 Shin Yoshimura

吉村伸 役者 / 作家

  • 職業 / イラストレーター
  • 血液型 / O型
  • 誕生日 / 12月9日
  • 趣味 / 土いじり時々大食い
  • 特技 / 雨に文句を言う
  • 出身 / ヨコハマのミナトのそば
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  • 出演
  • [ 舞台 ]「サンパティック★ブロンコ」「ポイプロ!」「Outsider A」「ご予約の高橋様」「絵筆士のコグレ」「お茶屋のかぞく」- 劇団Q+ /「夏への扉」- 雀組ホエールズ /「腕王」「みたびオールディーズ」- collarchild /「みんなでお茶を」「ハナウタ商店街へようこそ」「横浜お気楽総合病院」「恋は世界を駆け巡る」「夜はこれから」「優しくサヨナラをする方法」「富籤」- 横浜スタイル「つっぱれおじょーず二万七千光年の旅」- 夢の遊眠社
    [ エキストラ ]ザ・スクープスペシャル「よど号ハイジャック事件~40年目の真相~」
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  • 脚本
  • 「サンパティック★ブロンコ」「アイノカタチ」「お茶屋のかぞく」「絵筆士のコグレ」「ご予約の高橋様」「Outsider A」- 劇団Q+
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