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演出×作家インタビュー
第6回本公演『夢中/滑稽』

劇団Q+の第6回公演『夢中/滑稽』が2019年9月14~16日、神奈川県のラゾーナ川崎プラザソルで幕を開ける。2014年に旗揚げした劇団Q+は、主宰・演出家の柳本順也と座付き作家の吉村伸による作品を上演する年一回の本公演のほか、劇団員を中心に活動するプロデュース公演、外部の演劇イベントへの参加など、様々な形で公演を行っている。主体となる本公演は、半年以上の準備期間を経て、劇団Q+の最新のチャレンジを披露する公演となる。
第6回公演『夢中/滑稽』は、同劇団の本公演では初のオムニバス作品だ。作家・吉村が育った横浜を舞台とした6つの物語を、総勢21名のキャストと、演出家・柳本の美意識とユーモアを追求する演出で描く。
本インタビューは、演出家と作家に作品の見所を聞いた。

横浜の運河に描く、人々の日常と人生
演出家=柳本順也×作家=吉村伸 / インタビュアー:弓月玲 撮影:堀伸也

演出家=柳本順也×作家=吉村伸
弓月
今作『夢中/滑稽』は、なかなか印象的なタイトルだと思うのですが、この言葉に込められた意味、作品のテーマを教えてください。
柳本
過去の劇団Q+の作品『絵筆士のコグレ』や『アイノカタチ』を作っているときから感じていたことですが、それぞれの登場人物、人の日常には小さな「うねり」や「浮き沈み」が沢山ある。今回の『夢中/滑稽』では、そこにフォーカスしたかったんですね。
壮大でドラマチックな物語も楽しいけれど、例えばタンスに小指をぶつけて苦悶する姿とか、面白いじゃないですか、日常ってそういう小さな面白さの連続で、そんな普通の出来事に人の大事な人生が詰まっている。だからあえて些細な日常を描いてみたくて、それを『夢中/滑稽』という言葉で表してみたんです。
それを座付き作家の吉村伸に伝えたところ、生まれてきたのが今回の作品です。
弓月
劇団Q+では初のオムニバス作品とのことですが。
柳本
この作品は、横浜の運河という一つの場所に生きた様々な人々を、時代を超えた6つの小さな物語に描きます。一つ一つはバラバラのお話ですが、そこには時代を超えても変わらない人々の日常、喜怒哀楽、幸せ、というものがある。それらによってテーマである『夢中/滑稽』という一つの大きな物語が完成します。
吉村
横浜は、今ちょうどIR(統合リゾート)誘致がニュースになってもいますけど、その昔「横の浜」と呼ばれていて、海の沖合に横長に伸びた州浜だったんです。それが江戸時代の黒船来航でペリー提督がやってきたときに、埋め立てられて町になった。
そしてその運河の界隈には、江戸時代には遊郭があったり、大正時代には華族がダンスパーティーをするような豪華なホテルがあったり、戦時中には空襲されたり、多様な国籍や宗教の人が住んでいたり、という歴史が残っています。
そんな場所で、いつの時代でも、色んな人が一生懸命に生きていた姿を、実在とフィクションも織り交ぜながら物語にしました。
弓月
演出での見所はどんなところでしょうか?
柳本
演出では様々な仕掛けを試みていますが、一番大きいものは、作家が綴った言葉を色々な形で立体化させる表現方法にチャレンジします。登場人物の心情やストーリーだけでなく、言葉そのもののエネルギーをお客様に届けたい。言霊というか、言葉のパワーを客席にぶつけていきたい。それがキャラクターたちの生命のエネルギーでもあるんです。
また、昨年に引き続き、ダンスなどによるパフォーマンスもパワーアップしています。このパフォーマンスも、ただカッコイイだけでなく、ストーリー性を重視しています。『夢中/滑稽』というテーマが、振付の前田美沙さんと池田富美さんによってどのように表現されるのか、僕自身楽しみでもあります。
演出家=柳本順也×作家=吉村伸
弓月
作家は出来上がった脚本に、演技と演出がついていくのを見守っているわけですが、どうお感じですか?
吉村
そうですね。脚本というのはもともと何かを明示的に描写しているものではないんですね。脚本を書くようになってから、映画や芝居を見ていると頭の中にテキストが浮かぶようになってしまったんですけれども、その頭の中のテキストを読んでみると目の前の場面とあまりにも違うので驚くことがしばしばです。
たとえば母娘の険悪な朝が、台本としては「おはよう」「おはよう。昨夜もタクシー?」「あれ? おかあさん、髪染めた?」なんて平和なテキストだったりします。ここで娘の返しが「いちいちうるさいなあ」でない所が脚本っぽいところですね。
ただ一方で、書いている方としては「あー、昨夜は遊びすぎて疲れた」「親の金で夜遊びばっかりしてるんじゃないよ」「自分だっていい歳して色気付いて。気色悪い」っていう感情のストーリーがある訳です。これをどこまで書くかがポイントで、書き過ぎると字面を読めば済んでしまう退屈なものになってしまいますし、書き足りないと役者の演技が曖昧だった場合お客さんに伝わりません。
演出家が台本も書く「作演」というスタイルの場合は、役者が気づかない場合に演出時に意図を説明するということもできるのですが、Q+の場合は脚本と演出は別ですから、このどこまで書くかというさじ加減に気を遣います。
と言っても、演出の柳本は脚本の意図を常に完璧に読み込んできますので、むしろこのさじ加減は役者との攻防になるわけですけれども。
弓月
すると稽古場では、作家と役者陣のイメージのギャップもあるということですね?
吉村
稽古に入って楽しみなのは、まず第一に、この書かなかったニュアンスがどれくらい伝わっているかですね。本読みや立ち稽古の段階で、説明的でないシンプルな台詞で役の関係性を的確に表現してくれていると「おお!」と、とても嬉しくなります。
そして第二に楽しみなのは、むしろこちらの方が大きいのですが、脚本の意図したものをどういう形で表現してくれるかです。
ぼくの脚本は映画的だと叱られることが多いのですが、一応頭の中で「出来事」として想定して書いています。劇中のやりとりに三次元の現実としてのイメージがあるということです。
ただ、それを演劇として表現する際には、役者には演技の幅がありますし、演出にはさらにそれを超えた表現そのものの幅がある。それは脚本を書いている時の、自分の、現実に縛られたイメージをはるかに超えてきます。これを見ているのはとても楽しいですね。
弓月
お二人にお聞ききします。今回の芝居の見所はどんなところですか?
吉村
演劇は、美術作品などと違って作品が個人に帰属しません。たとえば脚本ならばテキストを提供するという形で「参加」しているに過ぎなくて、完成した演劇作品は、脚本執筆時に頭の中にあった「出来事」とはまったく別の、ずっと豊かなものです。この、脚本、役者、照明・音響・美術・衣装など各スタッフ、参加者それぞれの力が演出家の元に集約されて一つの作品になるという部分が演劇の魅力であり大きな力の源なのだと思っています。
今回も、接収解除すぐ後の横浜を知っている作家のノスタルジックで若干センチメンタルなテキストを、今の時代の若い人たちの力で、市井(しせい)の人々がそれぞれ懸命に生きる普遍的な物語に練り直してくれました。楽しんでいただけましたらうれしいです。観てくださる皆さんの心に届くものが何か、これはまた作家としまして三番目の楽しみです。
柳本
ゲスト出演者の中村容子さん、前田美沙さん、池田富美さんは、劇団Q+への参加は3回目で、もうお馴染みですが、彼女らの素敵な演技力、そして初出演の緑慎一郎さんの芝居が、劇団員たちとどのように絡み合っていくのか、楽しみです。
また、劇場にお客様が来て役者と同じ空間を共有することによって完成する演劇ならではの表現を目指したい。お客様に、役者の芝居を観ながら想像することを楽しんでいただけるような、細かいわくわくの仕掛けをいっぱい用意しています。ご期待ください。

(文責:弓月玲)


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