劇団ケーキ投函『ケーキを海底のポストへ投函』

「夢じゃない」インタビュー
〜エリートにだってダメなところはある。その可愛らしさを芝居に〜

キャスト=岳 × 作・演出=堀伸也/インタビュアー:弓月


劇団Q+プロデュースによるユニット「劇団ケーキ投函」の第一回公演『ケーキを海底のポストへ投函』が2019年2 月24 日(日)、神奈川県横浜市の若葉町WHARF で開かれる。

同公演は、四人の作家が書いた脚本を四つのチームが上演。個性豊かな脚本と出演者により、「恋愛」をテーマとした四つの物語が紡がれる。

そのひとつ「夢じゃない」(作:堀伸也、出演:岳)は、“エリート水道局員の初デートの朝”を題材にした一人芝居。実は、作・演出の堀伸也と出演の岳は同一人物で、脚本の執筆から演出、実際の芝居まですべて一人きりで創作している。本インタビューはその舞台裏に迫る。

「夢じゃない」岳×堀伸也 /『ケーキを海底のポストへ投函』

弓月
「夢じゃない」は『ケーキを海底のポストへ投函』で上演される四作品中、唯一の一人芝居。岳さんと言えば、劇団Q+の稽古でもよく一人芝居にチャレンジされていますね。「いまさらキスシーン」(作:中屋敷法仁)や、「煙草の害について」(作:アントン・チェーホフ)など。一人芝居が好きなのですか?
岳(堀)
「いやぁ、そういうわけではないですね。稽古では自分の芝居を磨くための課題作として選んでいました。最初にやった『いまさらキスシーン』はエネルギーをいかに保つか、というのが課題で。そのあとの『煙草の害について』と今回の『夢じゃない』は、成り行きかな」
弓月
成り行きなんですか(笑)。
岳(堀)
「実のところ今回の公演では僕も会話劇をやりたかったんですけど。色んな人と長めにがっつり会話して絡むような」
弓月
ということは、真逆の方へ行ってしまったということですか。
岳(堀)
「今回、オムニバス公演ということで、『夢じゃない』以外に三作品をそれぞれの作家さんが脚本執筆・演出をして、そこにやる気のある出演者が集まってチーム分けをしているんですが。僕は脚本を書くのも演出をするのも初めてで、さらにチームをまとめて芝居を作っていくっていうのにちょっと自信がなくて(笑)。一人なら全部を自分でコントロールできるよな、と思って一人芝居になりました。作品自体の構想は以前からあったので、せっかくの機会だからここでお披露目しようかなと」
弓月
一人芝居の魅力はどんなところですか?
岳(堀)
「自分の考えたことを自由にできるところかな。複数人の芝居だと、他の役者の演技とバランスを調整したりするけど、今回の『夢じゃない』なんかは一人でまくし立ててドタバタする感じなので、舞台の空間をどう使っていくかなど、好き放題にやれるなって」
弓月
一人芝居をやるにあたり心がけていることなどはありますか?
岳(堀)
「セリフをただわめいているように見えてしまうのはイヤだなあと思います。観客の視線が役者一人に集中するので、一挙手一投足すべて観られる。最初から最後まで気が抜けないです。セリフの言い方、身体の動き、舞台上の使い方などなど、全部を楽しんでもらえるよう計算して作っておかないといけない。まあその分、自分で考えたことが全部自由に表現できるから、そういう意味では楽かもしれない。相手役がいると相手を主体で考えてしまうところがあるんですけど、一人芝居だと、お客様にどう見えているか、それだけを考えることができる。そういうところが楽しい。お芝居っていうよりパフォーマンスとして捉えているのかもしれない」
弓月
稽古が大変そうだなあと思うのですが。
岳(堀)
「頭の中で稽古をしている時間が長いですね。寝る前とかにイメージトレーニングをしたり。まずは20分あるセリフをスムーズに言えるようにするのが第一段階で、それから動きを稽古場でやってみるということになります。稽古していて、良い感じの動きを閃けると嬉しい」
弓月
お客様にぜひ観ていただきたいお気に入りの動きってあります?
岳(堀)
「走り出すときのポーズかな(笑)」
弓月
岳さんが演じる真島誠という登場人物ですが、このキャラクターが生まれたきっかけは?
岳(堀)
「今回登場する真島誠という人物はエリート水道局員なんですけど。もともとは一人芝居ではない別の作品のキャラクターとして考えていまして、それは真面目なエリート水道局員と女の子の恋愛話で、ミュージカルというかエンターテインメント風の作品として考えていました。今回の『夢じゃない』はその物語の後日談のような設定で、初めて女の子とデートをすることになった主人公を描いています。真面目でエリートで爽やかな好青年という非の打ちどころのない主人公が、実は恋愛面に対しては疎くて失敗ばかりしてしまうという、人間的な可愛らしいところを描きたいと思っています」
弓月
稽古を見ましたが、たしかに主人公の真島誠という人物は可愛らしいですね。人の二面性やギャップを芝居で見せたいということですか?
岳(堀)
「そうですね。キャラクターの魅力ってそういうところなのかなと思うんですよ。いつもは出来る奴なのに、なぜか肝心なところでドジばっかり踏んでしまう。でも何とかしようと頑張る。お客様にはその姿を見守っていただきたいです(笑)」
弓月
今回の作品の題材が“エリート水道局員の初デートの朝”ですが、ちなみに、岳さん(堀さん)の朝の思い出は何かありますか?
岳(堀)
「僕は、朝は慌てないタイプですね。…慌てないというか、諦めるタイプ(笑)。出掛ける準備などは前日の夜にやっておきます。ぜったい起きられないので。起きてからは活動的になれるんですけど、目が覚めてから起き上がるまでが長いです。スマートフォンの目覚まし時計のスヌーズ機能を一時間くらいかけて。それからストレッチをしてムリヤリ気合いをしぼり出します」
弓月
役作りをするために、自分の経験などを活かしますか?
岳(堀)
「僕はあまり自分の経験は参考にしないですね。ドラマやアニメーションなどの作品を参考にして、アイデアをかき集める方が多いです。この動きだとこういうことを表現しているように見えるなとか、こういう喋り方だとこういう人に見えるなとか。形で見せていくタイプですね。一人芝居だと特に。自分の気持ちや言いたいことは、台本のストーリーの中に入っているから。だから演出の意図と自分が感じたものが違っても、まずは演出の要望の形をやってみて、それからそこに至るには役のどういう感情の流れがあるのかなって考えます」
弓月
仕上がりが楽しみな「夢じゃない」ですが、公演に向けて意気込みを一言。
岳(堀)
「とにかく完成度を上げられるよう奮闘中です。情緒とかではなく、芝居としてのパッケージをしっかり見せたい作品です。お客様にも楽しみにしていただけたら嬉しいです」

(文責:弓月玲)